今日はTracy Chapman(トレーシー・チャップマン)の Fast Car(ファスト・カー)です。
直訳は「速い車」ですね。
歌詞と和訳だけ見たい方は下の目次の「歌詞/和訳」クリックしてください。
ザ・トラック・オブ・ザ・デイ
- トラック名: Fast Car(ファスト・カー)
- アーティスト名: Tracy Chapman(トレーシー・チャップマン)
- 収録アルバム: Tracy Chapman(トレーシー・チャップマン) *Track 2
- アルバムリリース日:1988年4月5日
Tracy Chapman(トレーシー・チャップマン)は、アメリカ オハイオ州クリーブランドの女性シンガーソングライターです。
今日は1988年にリリースされた彼女のデビュー・アルバム2曲目に収録されている[Fast Car]です。
US Billboard Hot 100で6位を記録したヒット曲で、アルバムはアメリカで600万枚の大ヒットとなりました。
昨年、アメリカのカントリー・シンガーのルーク・コームスのカバーが大ヒットして再び注目を浴びましたね。
私はリアルタイムでこの曲のヒット体験していたのですが、当時ハード・ロック少年だったこともありあまりピンと来ませんでした。
メロディも淡々としていて地味だったので引っかかるものがなかったんですね。
ましては歌詞の内容まで理解しようとまでしませんでした。
何故この曲を取り上げたかというと昨日6/9(日)に行った毎年日比谷公園で開催される無料フェス「日比谷音楽祭」に出演した七尾旅人が日本語詞をつけて歌っていたから。
七尾さんは、どうしようもない生活から君の持っている車でどこかに行ってしまおう、そして新天地の生活もままならなくても生きていくカップルについて、たった1曲の中に映画のようなドラマが描かれているといった前説をしてから歌ってました。
そして「あぁ、やっぱり良い曲なんだな」と感じたからです。
七尾さんの日比谷フェスでのライブの本編はこの曲からスタート。
(実はリハからなだれ込んて開演時間前に「湘南が遠くなっていく」をやってくれたので実質2曲目ですが...)
新曲や未発表曲中心のセトリで、笑いをとりながらも時折毒を吐きつつのMCを交えてのライブで、無料フェスということもあり、どうせ自分を知らない人も結構いるだろうから伝えたいことを話して好きなようにやったれ的な自由さを感じました。
(かく言う私も七尾旅人はつまみ聴きレベルで知っている程度です...)
パレスチナや能登半島地震に纏わる話を交えながらそれらをテーマに取り上げた歌も歌ってくれました。
音楽堂ではなく全て立ち見で足場が舗装されていない健康広場という場所でのライブにも関わらずステージ周辺はびっしり人が集まってました。
七尾さんは無料フェスという祭りにを見にきた多くの人達に静かな波紋を投げるような記憶に残るライブを繰り広げてくれました。
話を七尾旅人からトレーシー・チャップマンに戻して、今なおたくさんのアーティストやリスナーに影響を与える時代を超える代表曲を改めて聴いてみます。
なお英詞は"genius.com"から引用し、Apple Musicから補足しています。
和訳後の感想は歌詞の下に記載しています。
Tracy Chapman - Fast Car (Official Music Video)
歌詞/和訳
Title : Fast Car
Producer : David Kershenbaum
Writer : Tracy Chapman
[Verse 1]
You got a fast car
I want a ticket to anywhere
Maybe we make a deal
Maybe together we can get somewhere
Any place is better
Starting from zero, got nothing to lose
Maybe we'll make somethin'
Me, myself, I got nothing to prove
あなた、車持っているよね
どこかへ行ってしまいたいんだよね
私たち約束しようよ
一緒にどこかに行けるといいな
どんなとこでも良いよ
どうせ何もないしドン底から始めてもね
多分大丈夫だよ
確証ないけどね
[Verse 2]
You got a fast car
I got a plan to get us outta here
I been working at the convenience store
Managed to save just a little bit of money*1
Won't have to drive too far
Just across the border and into the city
You and I can both get jobs
Finally see what it means to be living
あなた、車持っているよね
二人でここから抜け出そうよ
私、コンビニでずっと働いてたし
ちょっとだけお金も持ってる
そんな遠くまで行く気はないんだ
国境越えてその街で暮らそうよ
そこで仕事を探そうよ
そうして生きてるって実感するんだ
[Verse 3]
See, my old man's got a problem
He lives with a bottle, that's the way it is*2
He says his body's too old for workin'
His body's too young to look like his
When mama went off and left him
She wanted more from life than he could give
I said, "Somebody's gotta take care of him"
I quit school and that's what I did
そう、私のパパには困ってるんだよね
毎日酒浸りだし、それが当たり前になってるんだよね
その人、働くには年を取りすぎているなんて言うけど
そんな風には見えないはずなのに
ママがパパを置いてでて行ってしまったとき、
ママはパパが頑張っていないと思っていたんだ
誰かがパパの面倒を見なければならないから、
退学して働くしかなかったんだ
[Pre-Chorus]
You got a fast car
Is it fast enough so we can fly away?
We gotta make a decision
Leave tonight or live and die this way
車持っているよね
どこかへ行けるだけの良い車でいいんだよ
決めたいんだ
今夜この街を出ていくか、このまま死んだように生きていくか
[Chorus]
So I remember when we were drivin', drivin' in your car
Speed so fast, I felt like I was drunk
City lights lay out before us
And your arm felt nice wrapped 'round my shoulder
And I had a feeling that I belonged
I had a feelin' I could be someone
Be someone, be someone
あなたの車に乗ってた時のことを思い出す
かっ飛ばして、酔ったみたいな気分だったな
街明かりが目の前に広がった
あなたは私を優しく抱き寄せてくれたよね
自分の居場所はここなんだと感じた
自分が何者かになれるって感じがした
何者かに、そう、生きてるって実感できるようになるんだ
[Verse 4]
You got a fast car
We go cruisin', entertain ourselves
You still ain't got a job
And I work in a market as a checkout girl
I know things will get better
You'll find work and I'll get promoted
And we'll move out of the shelter*3
Buy a bigger house and live in the suburbs
一緒にドライブしてると本当に楽しいんだ
あなたはまだ求職中だけど
私はスーパーのレジ打ちで働き出せた
だんだんと良い感じにはなってるね
あなたは仕事に就けるだろうし、私は給料上げたいな
そして今のボロ家から出ていこうよ
郊外の大きな家を買って住もうよ
Speed so fast, I felt like I was drunk
City lights lay out before us
And your arm felt nice wrapped 'round my shoulder
And I had a feeling that I belonged
I had a feelin' I could be someone
Be someone, be someone
かっ飛ばして、酔ったみたいな気分だったな
街明かりが目の前に広がった
あなたは私を優しく抱き寄せてくれたよね
自分の居場所はここなんだと感じた
自分が何者かになれるって感じがした
何者かに、そう、生きてるって実感できるようになるんだ
I got a job that pays all our bills
You stay out drinkin' late at the bar
See more of*4 your friends than you do of your kids
I'd always hoped for better
Thought maybe together, you and me'd find it
I got no plans, I ain't going nowhere
So take your fast car and keep on drivin'
私の仕事で毎月の支払いは大丈夫になったね
あなたは遅くまでバーで飲んでいるね
あなたは子供たちよりも友達と会うことが多くなったよね
いつももっと良くなっていると良いね
二人が一緒にいれば、成し遂げられるって思うんだ
特別なプランはないし、もうどこかに行くこともない
だけどこれからもあなたの車に乗ってドライブし続けるんだ
Speed so fast, I felt like I was drunk
City lights lay out before us
And your arm felt nice wrapped 'round my shoulder
And I had a feeling that I belonged
I had a feelin' I could be someone
Be someone, be someone
かっ飛ばして、酔ったみたいな気分だったな
街明かりが目の前に広がった
あなたは私を優しく抱き寄せてくれたよね
自分の居場所はここなんだと感じた
自分が何者かになれるって感じがした
何者かに、そう、生きてるって実感できるようになるんだ
Is it fast enough so you can fly away?
You gotta make a decision
Leave tonight or live and die this way
どこかへ行けるだけの車でいいんだ
今夜この街を出ていくか、このまま死んだように生きていくか
トラック・インプレッション
ボブ・ディランやニール・ヤングのように評論家達が絶賛するシンガー・ソング・ライターって良い曲を書くけど難解な曲が多いという印象でちょっと苦手でした。
今の時代だとオルタナ・フォークとオルタナ・カントリー系アーティストもそう。
この曲を聴いた時のトレイシー・チャップマンも評論家にバカ受けでグラミー賞も獲得。
当時、興味の範囲外でこの曲だけの一発屋というイメージでした。
だけど今の時代の女性アーティスト達に確実に影響を与えているアーティストでありこの曲が重要だということはわかります。
そんなイメージでしたが、改めて訳してみるとやっぱり良い曲でした。
歌詞は至ってシンプル。
高校生レベルでも辞書(今でいうネット)で単語の意味を調べる必要のある単語や慣用句も少なくくらいです。
そんなところもトレイシーが多くの人に届けたいと言う気持ちが込められていて分かりやすい言葉で綴った歌詞なんだなぁと感じました。
歌詞は長いので訳すのは大変でしたが、易しい言葉で綴られているため楽しんで訳せました。
直訳していくと味気ない和訳になってしまうので、トレイシーの優しく語りかけるようなボーカルのように歌詞の中の"you"に語りかけるような和訳にしてみました。
ストーリーとしては、裕福な生活ができるような完全にパッピーエンドではないですが、約束通り二人で車で抜け出して新天地となる街で暮らし始め、子供も生まれて少しずつ手も掛からなくなり、生活費のやりくりにも苦労しなくなり、暮らしは安定していることが伺えます。
ただ和訳の[Verse 5]の箇所で他の方の和訳を見てみると、一緒に暮らしている彼が夜は友達とバーで過ごすことが多くなり、子供と顔を合わせる時間がないようなことが書かれてます。
彼が仕事に就いたということも歌詞にないので父親と同じようにアルコール浸りの生活になってしまっているように読み解けます。
私は日本のサラリーマン家庭のように彼が飲みニケーションで忙しく、奥さんは家で平和にのんびりしているのかなと思いましたが、よく聴くとどうやらそうではないようです。
彼もそんな風になってしまいもう何処にも行けず、やるせない思い抱えている主人公の様子がうかがえます。
本当に短編小説のような歌。
この歌に支えられたり支えにして生きている人が今でもたくさんいるんではないかという位、時代に風化されず色褪せない名曲です。
ではまた。